弘前りんごの北のまほろば

司馬遼太郎の”街道をゆく”のタイトル”北のまほろば”に魅せられて、本州最北端の県にやってきました。日々見聞きしたこと、感じたこと、考えたことなどをつれづれなるままに綴ります。
弘前りんご
■ニックネーム
  弘前りんご 
■年齢
  もはやアラカン
■住んでるところ
  本州最北端の県
■好きなたべもの
  粉もん(何せ生粋の大阪人ですから)
■職業
  一応、教育・研究者(二束のわらじ)
■趣味
 ・音楽
   主にクラシックをもっぱら聞く方、家族内では異端児でした、
   最近ある楽器の秘密練習を始めています (^_^;)
   そしてPCオーディオ

 ・撮り鉄(いやグルメ鉄の方が正確かも)
 ・鳥撮り(バズーカみたいなレンズと、ビデオ雲台で格闘中)
   その他、写真の各ジャンルに挑戦中

 ・美術・工芸・建築鑑賞

 ・パソコンいじり

・映画鑑賞

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(弘前りんご)
原田マハの短編小説集”モダン”は、MOMA(ニューヨーク近代美術館)を舞台にした作品集です。
私にとって、おそらく日本人にとっても、印象深いのは、第一章”クリスティーナの世界”ではないでしょうか。
タイトルは、同名のあのアンドリュー・ワイエスの名作から取ったもの。
下半身麻痺の女性が、草原を這って、我が家に向かって進もうとしている光景を描いたもの。
小説では、2011年3月11日の東日本大震災のときに、福島県立美術館にこの作品が、アンドリュー・ワイエス展のために貸し出されていて、MOMAの委員会が、作品を守るために即回収を決め、MOMAのコーディネーターの職にあった日系女性職員杏子を派遣するというストーリー。
この作品を日本に誘致するために多大な努力を払った現地学芸員伸子と、本意は回収するには及ばないと思っても、上からの命によって福島に向かわざるを得ない杏子の心の交流を描いています。
救いは、杏子が福島のためにワイエスの作品を近い将来、再び貸し出せるようにすると決意するところです。
そしてそれはこの絵の、絶望的な状況にあっても、希望を捨てず前に進もうとする女性の強い意志の力に合い通じるものがあるのではないでしょうか。
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まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)
まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫) (JUGEMレビュー »)
原田 マハ
この"まぐだら屋のマリア"は、作品のタイトルから想像されるように、新約聖書の様々なエピソードにインスパイアされて書かれた作品ではないかと思います。

登場人物のいくつかの名前も、明らかに聖書の登場人物から取っています。

たとえば、東京の高級料亭の調理人見習いである、主人公 紫紋(イエスの第一の弟子で、初代教皇となったシモン・ペテロから)。

そしてヒロイン、マリア(本名:有馬りあ、彼女の食堂の客からの呼び名。聖母マリアではなく、おそらくイエスに付き従い、ゴルゴダの丘の処刑に接し、その後の復活も目にした、マグダラのマリア)。

紫紋も、そして尽果(つきはて)と言う、かろうじて、バスだけは来る、これ以上はない辺境の地に、まぐだら屋と言う食堂を切り盛りするマリアも、共に罪深い過去を持っています。その過去から逃れるため、死に場所を求めて、紫紋はこの尽果にたどり着きます。そしてマリアもまた、自身の贖罪のためにここにやってきた過去を持ちます。

その二人が天の配剤のごとくに出会い、一緒に食堂を営み、人々に食べる喜びを提供することで、二人もまた最後には再生してゆきます。それは罪が消えるわけではなく、忘れようとして忘れられず、もがいて来たものを、あるがままに受け入れると言う気持ちになったことによってでした。

原田マハの作品は、美術を題材にした斬新な作品群によって、注目を浴びてきましたが、それ以外にも多彩なカテゴリーの作品を描いています。

このまぐだら屋のマリアは、たとえば、

”本日はお日柄もよく”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=1940)や、

”旅屋おかえり”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=2615)

のような、美術にテーマを置いていない一連の作品群に分類されるかと思います。

いずれにしても、原田マハの多彩な作風に魅了されますね。
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旅屋おかえり [ 原田マハ ]
旅屋おかえり [ 原田マハ ] (JUGEMレビュー »)
”旅屋おかえり”は、旅そのものが目的であり、生きがいの、そしてそれを仕事にしてしまった一人の女性の夢、挫折そして再生の物語です。

旅屋とは、故あって自分は旅に出ることが叶わない依頼人に代わって旅をして、本人の代わりに希望の体験や目的を果たして、その旅の記録を依頼者に成果として届けるというもの。それを思い立ったのは偶然の出会いから。

またタイトルのおかえりは、家に、故郷に戻ったときに掛けられる言葉、”おかえり” と、丘えりこの愛称、おかえりをもじったものです。そしてその言葉を聞きたくて旅に出るのです。

旅屋の仕事としての旅によって、契約内容を遥かに超える成果(人間関係のもつれを解き、凍てつきを融かす)がもたらされるだけでなく、主人公、そしてそれを取り巻く人々の心までも癒やしてゆきます。

そして成功するまでは故郷には帰れないと覚悟している主人公が、故郷で待つ母のおかえりという言葉を聞ける日も間もないというところで、小説は幕を閉じます。

まさにハートウォーミングな小説。読後にじんわりと心があたたまる作品でした。
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