(睡蓮の画家、モネ)
フランス印象派の画家モネ(Claude Monet, 1840年11月14日 - 1926年12月5日、86歳没、wikipedia)が、50代後半から最晩年まで描き続けたテーマである睡蓮。その画風が年と共に変化していきました。そこには視力との関係が...
ジヴェルニーの日本の橋と睡蓮の池(1899年、wikipedia)
はじめは、主題の睡蓮だけでなく、背景には自宅の自慢の庭の木々や日本風の橋を、それとわかるように描いていました。
しかし、次第に背景は曖昧になり、睡蓮とそのすぐ周りの近景にフォーカスして行き、さらには睡蓮さえもが造形が曖昧な、抽象画のようになって生きました。
睡蓮の池(1907年、wikipedia)
これは、50代の頃に発症した白内障が徐々に進行し、画家にとっての命とも言うべき視力が衰えていったことと密接に関連すると言われています。
その証拠に、白内障の手術を受けて視力が回復すると、絵の輪郭が元のように戻っています。
尤も手術の影響で、青みがかって見えるようになって、絵も全体に青を貴重とした絵になっています。
このように、老化がその作者の表現力に影響を与えることは往々にしてあったようです。
(晩年に大飛躍の北斎の場合は?)
では、モネとほぼ同じ年齢まで生きた葛飾北斎の場合はどうでしょうか。
葛飾北斎(1760年10月31日? - 1849年5月10日、88歳没、wikipedia)
彼の代表作である”富嶽三十六景”は、1831-34年の版。
神奈川沖浪裏(富嶽三十六景、wikipedia)
その中の代表作の一つ、神奈川沖浪裏。
大胆な構図、躍動感あふれる波の表現、当時大変高価だったベロ藍を惜しげもなく使った色彩表現。
いずれをとっても、70歳代後半の老人が描いたとはとても思えない素晴らしさです。
4−50歳代で当代一の浮世絵師という評価を得た北斎でしたが、それで満足すること無く、新たな表現を追い求める姿勢は、その後も変わりませんでした。
そしてこの絵は、絵師という職人から、画家という芸術家への変身を如実に示した作品です。また錦絵(版画)の完成まで、間に彫師、摺師という段階を経ることを、芸術表現の大きな制約と感じた北斎は、その後肉筆画(自らの筆で直接、絵絹や紙に描いた浮世絵)へその活躍の舞台を移していきます。
しかし、80歳代を越える頃から、さすがの北斎でさえも衰えから逃れることが出来なかったようです。
徐々に手に震えが現れ、直線、長い描線を一気に描くことが難しくなりました。
細かく見ると、富嶽三十六景の後に描かれた富嶽百景では、描線が細い先の連続で表現されています。
長年の修練、元々デッサン力、筆力のあった北斎のこと、絵自体はこのようにそのテクニックで衰えをある程度は補えた(そしてそれが新しい表現法となった)可能性があります。
しかし、落款(著者が自ら書き込むサイン)には、震える手による字の乱れがあり、そこから衰えを感じ取ることが出来ます。
その一方で、晩年になるほど色彩表現は大胆かつ鮮やかになっています。
また以前の北斎には見られなかった、細部の緻密な表現が作品によっては現れてきています。
とても震える手でこんなことが可能になるとは考えにくいですね。
(娘、応為の存在)
葛飾応為(生没年不明、wikipedia)
近年の北斎研究で、恐らくある時期から北斎は、共同制作者としての娘の応為と共に作品を制作したと考えるのが妥当だという風になってきています。
それは、画面構成力、筆力に優れる一方、細部の表現にはあまりこだわらなかった北斎に対して、明暗表現へのこだわり、色彩感覚の冴え、リアリティのある表現に抜きん出ていた応為。この二人が共同作業、分担作業をしていたと考えれば、北斎のとても80歳代とは思えない旺盛な制作活動、作品数、鮮やかな色彩表現、細部の緻密な表現が伴った多くの作品が誕生したことが説明できるわけです。
この説が妥当であるかどうかは、今後のさらなる研究、新しい作品の発見などを待つ必要がありますが、とても魅力ある説だと思います。
葛飾応為 ”吉原格子先之図” (wikipedia)
無落款ながら、絵の中の提灯に、彼女を示す「應」「為」「榮」の文字が見える。
生没年さえ不明な、謎の絵師葛飾応為(応為は号で、本名はお栄あるいは應栄)。
彼女の落款が書き込まれた作品は、わずか。
その全貌を解明するのはなかなか骨の折れる仕事だとは思います。
しかし、それをあえてやるだけの魅力のある存在でしょう。
今回は、色んな角度から葛飾応為の謎解きに挑戦した、ノンフィクション”北斎になりすました女_葛飾応為伝”(壇 乃歩也 著)を読んで、ますます応為という絵師について知りたくなりました。
今度は、北斎と応為の研究者、キャサリン・ゴヴィエが二人を描いた”北斎と応為”を読んでみようかな?(*^^*)
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