2013.05.31 Friday
多様な光の画家達_カラヴァッジョ、レンブラント、フェルメール、そしてラ・トゥール
見る芸術である絵画は、光がなくては成り立ちません。しかし、多くの画家にとって光は空気のようなもの、あって当然のもので取り立てて言及すべきことではなかったようです。しかし、その中でも、光にこだわった画家たちがいました。
窓から差す一筋の光によって、緊迫した一瞬を切り取ってみせた、”マタイの召命”。イタリアのカラヴァッジョによって、バロック絵画の新しい1ページが始まったと言われています。
その数十年後、オランダのレンブラント。彼の代表作の”夜警” では、やはり窓から差す光が、スポットライトのごとく、暗闇の中から、登場人物を浮かび上がらせています。さあこれから劇が始まるという緊張感が、見事に描かれています。
そしてそれは、同じくオランダのフェルメールに継承されます。彼の作品のほとんどすべてにおいて、窓から差す光がまさに主役。ただ、全二者と違うのは、光が柔らかく空間全体に回りこみ、静謐な雰囲気をもたらしている点ですね。
大工の聖ヨセフ(幼子イエスとその養父ヨセフ。子の未来を案じる父の悲しみの表情が、ろうそくにより照らしだされています)
さて、レンブラントとほぼ同じ時期に活躍したフランスの画家に、ジョルジュ・ドラ・トゥールがいます。彼も光を実に効果的に絵に生かした画家でした。
ただ彼と上記の他の作家との違いは、その光源にありました。そう、この”聖ヨセフ”に見られるように、外光ではなくローソクなどの灯りです。
悔い改めるマグダラのマリア(メトロポリタン美術館蔵)
灯火の前のマグダラのマリア(ルーブル美術館別館のルーブル・ランス美術館蔵)
ラトゥールが宮廷画家として成功した矢先、仕えていた王(ルイ13世)が亡くなり、次の王(ルイ14世)の華やかな好みに合わず、冷遇されることになり、やがて歴史の闇に消えていったということです。実はラトゥールは20世紀に入って再発見された画家なんですね。謎の多いことも、今一般の人気が高まっていることの理由になっているかもしれません。
しかし、そんなこととは関係なく、マグダラのマリア(4枚発見されています)それらの絵の静かでありながら、劇的な表現になっていることが、その本当の魅力でしょう。