キリスト教において、信仰の対象としてキリストに次いで 大きな存在は、聖母マリアでしょう。そのため聖母マリアを称える芸術作品は数多く存在します。それは音楽においても同じ。
ミケランジェロ作 ”ピエタ” サン・ピエトロ大聖堂 wikipediaより)
たとえば、わが子イエスを刑場にて失ったマリアの悲しみをうたったスターバト・マーテル(悲しみの聖母)。多くの作曲家が作品を残しています。古くはパレストリーナ、ヴィヴァルディ、日本でつとに有名なペルゴレージ、そして近代に入ってドヴォルザーク、プーランク、近年ではペンデレツキなど。
しかし、アヴェ・マリアの方がより一般の人に親しまれているでしょう。アヴェ・マリアとは、元々、「こんにちは、マリア」とか、「おめでとう、マリア」を意味する言葉です。これが転じて、この一文にはじまるキリスト教(特にカトリック教会)の聖母マリアへの祈祷を指すようになりました。
こちらも当然というか、多くの作品が残されています。スターバト・マーテルよりは小さい作品(どれも3-6分弱)ではありますが。
(アヴェ・マリア名曲集 〜 10人の作曲家による)
このCDには、ジョスカン・デ・プレに始まって、バッハ(グノー編曲)、シューベルト、カッチーニ(最近にわかに注目されていますが、別の人の作という説もあります)、リスト、ブラームス、ブルックナー、ヴェルディ、ドニゼッティ、エルガーと、実に多彩です。
聴いてみて、有名どころのバッハ、シューベルト、カッチーニはもちろんのこと、今回初めて聞いたブルックナーのアヴェ・マリアが実に美しい旋律で、彼が稀代のメロディー・メーカーの一人であることがわかります。
秋の夜長にこういった同一テーマによる優れた小品集を聴いてみるのもよいのではないでしょうか?