弘前りんご_新参者の宝塚日記

大阪から転勤で仙台8年、青森県弘前で21年暮らした関西人が、関西圏とはいえ、大阪とは違った土地の宝塚に住み、いわば新参者として暮らす中で、見聞きしたこと、思ったことをつれづれに書き綴って行きます。
盛美園
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    今日は弘前の隣の市である平川市にある盛美園をたずねました。
    最近マスコミで話題になっている、スタジオジブリの最新アニメ”借り暮らしの
    アリエッティ”の背景に生かされたといったこととは関係なく、以前から(10年越しで)
    見にゆきたいと考えていました。ちょうど近くに行くついでがあったので、
    今回訪ねることにしたというわけです。

    ところで、弘前には建築史という面からみると面白いものが結構あります。
    例えば、昭和の建築家を代表する一人である前川國男の作品が弘前だけで、
    その数8件を数え、東京都と並ぶ数であり、地方都市としては群を抜いています。

    また江戸から明治にかけて活躍した大工、堀江佐吉は和洋折衷式の美しい建築を
    多く弘前に残しています。また江戸時代に作られた特異な仏堂建築(内部が螺旋
    構造で入る時と出るときで異なる経路を通るようになっている)である栄螺堂が
    弘前に現存します。

    今回訪れた盛美園の盛美館も和洋折衷式ですが、設計は建築家西谷市助によるものです。
    庭園は武学流の形式によるもので、国の名勝に選ばれています。比較的小ぶりの庭と
    建物ですが、お互いにうまく融合して、見事な空間を作り出しています。残念ながら
    二階の和洋折衷の部屋は公開されておらず見ることがかないませんでした。
    外観の和洋折衷様もさることながら、二階の部屋の内部がそれはみごとに和と洋が
    融合した形になっているんですが。
    http://www.seibien.jp/seibikan/2F.html

    ところで、盛美園の庭や盛美館の建物については写真などでも知っていましたが、
    今回訪れて初めて見た御宝殿に圧倒されました。中尊寺の金色堂よりは規模はかなり
    小さいものの、金箔で覆われた霊廟形式の御宮殿、その前に祭られた鎌倉時代の
    大日如来、そしてそれらを取り囲む、金箔、黒漆、蒔絵をふんだんに使った仏間が
    素晴らしかったですね。
    鎌倉時代から続いた当主清藤家の家宝として代々大事に受け継がれてきたものと
    思われます。30分ごとに3分間だけ公開という形をとっていて、あまりゆっくりと
    見ることができませんでしたが、またいつか見に来たいと思います。

    盛美館盛美園庭園庭園の古木

    | 弘前りんご | 紀行 | 16:32 | comments(0) | trackbacks(0) |
    ペルゴレージ生誕300年
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      ペルゴレージ生誕300年ということで、彼のスターバト・マーテル
      (悲しみの聖母)のCDを聴きなおしてみました。
      Abbado指揮、London Symphony Orchestra member
      Marshall, Margaret (S)、Terrani, Lucia Valentini (A)
      Deutsch Grammophon (POCG-1118)

      この作品は彼の26年というモーツァルトやシューベルト以上に
      短い生涯における遺作となりましたが、古典派の先駆けとして、
      抑制された悲しみの感情表現がかえって、切々と胸に迫ります。
      以前に紹介した(2010.02.13)ヴィヴァルディの同名作品の方が、
      よほど表現が直截的だと感じます。同じイタリア人作曲家ですが、
      時代背景もあるのでしょうか?もちろんヴィヴァルディの曲も
      大好きですが。

      聴いたCDの演奏は、LSOの楽団員からなる小規模編成のオケが、
      ソリスト二人を良くサポートし、室内楽的な美しさを感じさせます。
      指揮者Abbadoの功績でしょうか?


      Stabat Mater

      ペルゴレージ : スターバト・マーテル
      | 弘前りんご | 音楽 | 00:18 | comments(0) | trackbacks(0) |
      PCオーディオ雑考
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         学生の頃、バイト代をためて買ったオーディオコンポシステムを6畳の
        下宿において、周りの人が出払った日曜日の午後に大きな音で
        ベートーヴェンのシンフォニーや、ストラヴィンスキーの春の祭典
        を比較的大音量で聞いていました。なつかしいですね。

        しかし、ある時から投資額と聞こえてくる音質との比(投資対効果比)
        のあまりの低さに、ピュアオーディオファンとしての道をドロップアウトしました。
        今考えてみれば、高級ステレオセットを畳敷きの6畳の下宿部屋で
        聞くというのがそもそも本末転倒であることはわかりますが、当時は
        そこまであまり考えませんでした。そのために部屋を変わるということが
        そもそも学生の身分では夢の話でしたから。

        その後は持っぱらラジカセ、仕事の合間にPC+スピーカー、最近はiPod
        +ヘッドフォンでクラシック音楽の渇きをいやしていました。そこでの認識は
        PC+オーディオインターフェース+アクティブスピーカーという組み合わせは
        6畳の下宿で高級ステレオと何ら変わりのない、(オーディオインターフェースに
        いくら金をつぎ込んだところで、出てくる音はたかが知れている)ということでした。
        そして音質には目を瞑って、聞こえてくる演奏の中身が大事と自分に言い聞かせて
        聞いていたように思います。

        しかし、はたしてそうでしょうか?
        実際の演奏会で聞こえてくる質・音量により近い再生を決して非常識でない程度の
        出費で得られるなら、それを否定することはないと思います。ただそれがこれまで
        不可能に近かっただけです。

        そんな状況も最近は変わってきました。
        PCオーディオの音の悪さの原因が、オーディオインターフェースを音質に悪影響を
        与える要素がそれこそ満載のPC本体内に置いているからだということが十分に
        認識され、音をスピーカーまでデジタル化されたままで持ち出し、最後にDA変換して
        無垢な音を再生する環境が整い始めたからです。
        まさにコロンブスの卵で、それをクリアすると、CDの音源をいったん忠実にHDDに
        取りこんでしまえば、いつでもいろんなアレンジで再生できるという利便性だけでなく、
        ピュアオーディオでそれこそ大枚はたいて克服しようとしていたジッターの問題など、
        いとも簡単にクリアしてしまえるというわけです。

        そのような状況を踏まえたPC用スピーカーが登場しました。
        Kripton社のKS-1HQM
        http://www.kripton.jp/pc-audio/index.html
        非常にコンパクトなボディーから合計50Wの出力を無理なく出すもので、
        CD規格を超える、スタジオマスター規格(96kHz/24bit)対応のUSB−DACを
        搭載しています。
        しかしその実力を発揮させているのはそれだけではなく、インシュレータ付きオーディオ
        ボードが小さな体からの大出力を可能にしている点にあります。
        しかもそれがピュアオーディオの世界なら、初心者のさらに入門編に当たる5万円を
        切る価格で出ているというから驚きです。

        ようやく学生自体に夢見ていたオーディオの世界が身近になってきたと感じています。



        | 弘前りんご | PC | 11:29 | comments(0) | trackbacks(0) |
        サバティカルを頂いて、約一ヶ月の国内留学と、美術展のはしご。
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          (サバティカル)

          7月後半から約一カ月にわたる埼玉大学への長期出張を、サバティカルとして頂きました。

           

          (美術館のはしご)

          その長期出張期間中の土日を使って、美術館のはしごをしてきました。

           *出張とはしごのどっちがメインか?なんて野暮なことは聞かないでください。

          酔いしれるという点では、飲み屋のはしごと共通点があります、知らんけど ^^;)

           

          (東京からスタート)

          まず、東京六本木の国立新美術館で、同時開催されていたオルセー美術館展(ポスト印象派)と、マン・レイ展。

          ついで上野の国立西洋美術館で開催されていた、ナポリのカポディモンテ美術館展。

          同じく上野の東京芸術大学附属美術館で、開催されていたシャガール展。

          これまた上野の東京国立博物館本館で特別展示されていた、琳派、酒井抱一の夏秋草図屏風特別展示、資料館で、土日限定で放映されている唐招提寺CG映画。

           

          (足を伸ばして山梨へ)

          場所を変えて山梨県立美術館ミレー館で、ミレーを中心に公開されているバルビゾン派の絵画。

           

          実はこの他に、節操がないといわれるかもしれませんが、国立科学博物館で大哺乳類展、大宮の鉄道博物館、国宝松本城、川中島の合戦により危機に瀕した信州善光寺の諸仏を保護するために、武田信玄が作ったといわれる甲斐善光寺まで観てきました。

          いずれも堪能させる量と内容でしたが、中でもオルセー美術館展で、アンリ・ルソーの「蛇使いの女」「戦争」、ゴッホの「星降る夜」に出会えたのが感動的でした。

           

          しかし、個々の作品の持つ魅力もさることながら、印象派から後の絵画史の展開が、単なる史実の説明に終わらず、画家たちが新しい表現を生み出すために、どのように格闘したかが、音声ガイドがなかなか秀逸で、実物の絵を通して感じ取れたのが収穫でした。

           

          (マン・レイ展での発見)

          マン・レイ(1890年8月27日 - 1976年11月18日、wikipedia)

           

          一方、写真芸術の始祖と呼ばれるマン・レイの作品展。

          彼は画家として認められることを願っていました。

          しかし、生活の糧として選んだ写真が注目され、それが芸術の域に昇華されて、逆に多くの芸術家たちにインスピレーションを与えました。

          その彼の創作の軌跡の全貌を観ることができる見ごたえのある展覧会でした。

          不覚にもソラリゼーションなどの写真の技法が彼によって確立したことを初めて知りました。

           

          (カポディモンテ美術館展)

          ナポリのカポディモンテ美術館展では何といっても、本展のポスターにも使われている、「貴婦人の肖像」。

          作者はチーズの名前みたいなパルミジャニーノ

          モデルは誰かわかっていません(タイトルに反して、当時のトップクラスの娼婦だったという説も)。

          しかし、非常に魅力的な絵です。

           

          一方、圧巻なのはアルテミジア・ジェンティレスキの《ユディトとホロフェルネス》旧約聖書に記載された、ユダヤの美しい寡婦ユディトの物語。彼女は町を包囲したアッシリアの将軍ホロフェルネスの寝首を搔いて町を救ったという説話を題材にしたもの。

          よほど印象的なのか、多くの画家、そして音楽家がこれをテーマに作品を残しています。モーツァルトの作品も先年のモーツァルトイヤーで復活公演され話題を呼びました。

          私が好きなのはその中でもヴィヴァルディのオペラ”勝利のユディータ”。特に序曲が非常に魅力的です。

           

          (東京芸大美術館で)

          さて、私の居住地にある青森県立美術館には、シャガールのバレエ「アレコ」舞台背景画全4点のうち、三点があります。

          (オープンの記念展示では、残り一点もボストン美術館から借り受けて一同に揃え、観る者を圧倒しました。)

           

          今回の芸大でのシャガール展で最も見たかったのも、モーツァルトのオペラ「魔笛」の舞台芸術作品(背景画、衣装デザイン等)です。依頼したのはメトロポリタンオペラで、新劇場のこけら落とし公演用に依頼されたもの。アレコから20年後になります。決して奇異を衒ったものではないけれど、シャガール独特の幻想的な構図と色使いが感じられるものでした。

           

          (国立博物館特別展)

          国立博物館で特別展示されていた夏秋草図屏風

          俵屋宗達、尾形光琳を継ぐ琳派の酒井抱一の代表作です。

          今は別になっていますが、元は尾形光琳の風神雷神図屏風の裏に描かれていて、表の風神、雷神のそれぞれに呼応する表現を夏草と秋草のそれぞれに加え、尾形光琳への敬意を籠めています。


          こんなにまとめて美術展を見た(はしごした)のは初めて。

          お陰で充実した時間を過ごすことが出来ました。

           

           


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          #サバティカル #国内留学 #美術展 #はしご #国立新美術館 #オルセー美術館展 #マンレイ展 #カポディモンテ美術館展 #山梨県立美術館 #ミレー #バルビゾン派 #シャガール #東京芸大美術館 #国立博物館 #酒井抱一

           

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          | 弘前りんご | 美術 | 23:15 | comments(0) | trackbacks(0) |
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          (弘前りんご)

          自身もバロック音楽の研究者であり、演奏家であるサルデッリが書いた、”失われた手稿譜 ー ヴィヴァルディをめぐる物語 ー” では、ヴィヴァルディが亡くなった直後から漂流し始める、ヴィヴァルディが残した膨大な手稿譜が本当の主人公であり、小説の形をとっているものの、そこに書かれたことはほとんどが事実です。

          しかし、その手稿譜がたどったその後の運命は、数奇としか言いようのないものでした。

          手稿譜を借金の方に取ろうとする債権者、取られるのを防ごうとしたヴィヴァルディの弟。

          修道士会に寄付されたものの、その価値がわからない修道士たちは、それをごみのように扱い、教会の倉庫の奥に放り込でしまい、長い年月の眠りにつきます。

          その後その存在を知った貴族が個人のコレクションとして入手。

          研究し、その散逸を防ごうとした研究者と、骨董的価値にのみ注目するファシスト政府との攻防。

          いずれも手に汗握る展開で飽きさせません。

          最大の貢献者の一人、ジェンティーリが追われて大学を去るときの言葉

          ”正しきものは、とこしえに記憶される” が、心に染み入ります。
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          ”旅屋おかえり”は、旅そのものが目的であり、生きがいの、そしてそれを仕事にしてしまった一人の女性の夢、挫折そして再生の物語です。

          旅屋とは、故あって自分は旅に出ることが叶わない依頼人に代わって旅をして、本人の代わりに希望の体験や目的を果たして、その旅の記録を依頼者に成果として届けるというもの。それを思い立ったのは偶然の出会いから。

          またタイトルのおかえりは、家に、故郷に戻ったときに掛けられる言葉、”おかえり” と、丘えりこの愛称、おかえりをもじったものです。そしてその言葉を聞きたくて旅に出るのです。

          旅屋の仕事としての旅によって、契約内容を遥かに超える成果(人間関係のもつれを解き、凍てつきを融かす)がもたらされるだけでなく、主人公、そしてそれを取り巻く人々の心までも癒やしてゆきます。

          そして成功するまでは故郷には帰れないと覚悟している主人公が、故郷で待つ母のおかえりという言葉を聞ける日も間もないというところで、小説は幕を閉じます。

          まさにハートウォーミングな小説。読後にじんわりと心があたたまる作品でした。
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