弘前りんご_新参者の宝塚日記

大阪から転勤で仙台8年、青森県弘前で21年暮らした関西人が、関西圏とはいえ、大阪とは違った土地の宝塚に住み、いわば新参者として暮らす中で、見聞きしたこと、思ったことをつれづれに書き綴って行きます。
ピアノ伴奏者という生き方
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    声楽家のコンサートでは、オーケストラをバックにしたアリアでない限り、
    ピアノ伴奏で歌う。聴きに行く人はもちろんその人の歌を目当てに行くのだが、
    ピアノ伴奏も楽しみに行く事を実現した希有な人がいた。
    ホッター、フィッシャーディースカウ、シュワルツコップなどの名だたる
    名歌手の伴奏を手がけたジェラルド・ムーアその人である。
    ピアノ伴奏が歌手より目立ってはいけないが、単に控えめに演奏するだけでは、
    また歌手との間に強い信頼関係が築けなければ、その力量を十二分に引き出す
    ことは叶わない。伴奏者の地位を歌手と対等なものにまで高めた功績は賞讃に
    値する。

    彼はピアノ伴奏も手掛けたというのではなく、最初から伴奏者としてスタート
    したとのことである。生活の糧を稼ぐため、アルバイトで始めた伴奏という
    仕事が、一生の、そして人々から賞讃をうけるものになった。
    その人が引退公演を行い、フィッシャーディースカウやシュワルツコップなどが
    友情出演したコンサートの記録のCDを聴いたが、楽しい雰囲気が伝わってくる。
    一日限りの主役ではあるが、これほど晴れがましい舞台もなかったろう。
    実に幸福な人生だと思う。

    A Tribute to Gerald Moore (EMI Classics)
    | 弘前りんご | 音楽 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
    ヴィヴァルディのスターバト・マーテル
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       スターバト・マーテル(”悲しみの聖母”, "聖母哀傷")はもっとも哀切に満ちた中世の詩で、それに刺激を受けた多くの作曲家達、古くはジョスカン・デ・プレ、パレストリーナから、ヴィヴァルディ、ペルゴレージ、ハイドン、ロッシーニ、ドヴォルザーク、近現代ではプーランク、ペンデレツキなどが作品を残している。
      最近ヴィヴァルディのものを聴いた。ヴィヴァルディといえば、合奏協奏曲”四季”に代表される、ヴァイオリンソロによる協奏曲が有名であるが、自身司祭であったためか、オラトリオ、カンタータなどの多くの宗教作品も残している。オラトリオ”ユディータ”なども近年復活上演され、評価が高まってきている。
      さて、そのスターバト・マーテルであるが、カウンター・テナーがオルガン、あるいはヴァイオリンソロと掛け合いながら歌うところが、シンプルでありながら、実に心に迫って来て、聖母の悲しみがまるで自分の悲しみのように感じられる。
      これを機会にヴィヴァルディの宗教曲をいろいろと聴いてみようと思う。

      The Masterworks of Vivaldi-ブリリアントクラシックス

      | 弘前りんご | 音楽 | 13:54 | comments(0) | trackbacks(0) |
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      (弘前りんご)

      自身もバロック音楽の研究者であり、演奏家であるサルデッリが書いた、”失われた手稿譜 ー ヴィヴァルディをめぐる物語 ー” では、ヴィヴァルディが亡くなった直後から漂流し始める、ヴィヴァルディが残した膨大な手稿譜が本当の主人公であり、小説の形をとっているものの、そこに書かれたことはほとんどが事実です。

      しかし、その手稿譜がたどったその後の運命は、数奇としか言いようのないものでした。

      手稿譜を借金の方に取ろうとする債権者、取られるのを防ごうとしたヴィヴァルディの弟。

      修道士会に寄付されたものの、その価値がわからない修道士たちは、それをごみのように扱い、教会の倉庫の奥に放り込でしまい、長い年月の眠りにつきます。

      その後その存在を知った貴族が個人のコレクションとして入手。

      研究し、その散逸を防ごうとした研究者と、骨董的価値にのみ注目するファシスト政府との攻防。

      いずれも手に汗握る展開で飽きさせません。

      最大の貢献者の一人、ジェンティーリが追われて大学を去るときの言葉

      ”正しきものは、とこしえに記憶される” が、心に染み入ります。
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      ”旅屋おかえり”は、旅そのものが目的であり、生きがいの、そしてそれを仕事にしてしまった一人の女性の夢、挫折そして再生の物語です。

      旅屋とは、故あって自分は旅に出ることが叶わない依頼人に代わって旅をして、本人の代わりに希望の体験や目的を果たして、その旅の記録を依頼者に成果として届けるというもの。それを思い立ったのは偶然の出会いから。

      またタイトルのおかえりは、家に、故郷に戻ったときに掛けられる言葉、”おかえり” と、丘えりこの愛称、おかえりをもじったものです。そしてその言葉を聞きたくて旅に出るのです。

      旅屋の仕事としての旅によって、契約内容を遥かに超える成果(人間関係のもつれを解き、凍てつきを融かす)がもたらされるだけでなく、主人公、そしてそれを取り巻く人々の心までも癒やしてゆきます。

      そして成功するまでは故郷には帰れないと覚悟している主人公が、故郷で待つ母のおかえりという言葉を聞ける日も間もないというところで、小説は幕を閉じます。

      まさにハートウォーミングな小説。読後にじんわりと心があたたまる作品でした。
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