弘前りんごの北のまほろば

司馬遼太郎の”街道をゆく”のタイトル”北のまほろば”に魅せられて、本州最北端の県にやってきました。日々見聞きしたこと、感じたこと、考えたことなどをつれづれなるままに綴ります。写真、音楽、そして本好き(万葉集)なアラ還です。
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短距離走、長距離走、あなたはどちらが得意ですか?
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    スポーツの世界には、短距離、長距離というジャンルの違いがあります。そして大抵のアスリートはどちらかを得意としている場合が多く、その両方に素晴らしい成績を残している人はあまり聞いたことがありません。 たとえば100mの著名な選手でマラソンでもいい成績を残している人はないでしょう。それはひとつには選手の持久力、瞬発力の違いといった資質の違いによる向き不向きもありますが、単純にそれだけでは決まらない要素もあるように思います。

    さて、この長短のジャンルは、小説の世界にもあります。そして短編の名手と呼ばれる作家もいれば、大河小説ともいうべき長編を得意とする作家もいます。こちらもアスリートと同様、向き不向きの傾向があるようで、両方のジャンルで傑作を残した作家はそうはいないように思います。

    しかし、その数少ない例外のひとりが、浅田次郎ではないかと私は思っています。

    ところで小説ではありませんが、出張の際に利用するJALでの楽しみが、機内誌Skywordに連載されている浅田次郎のエッセイ”つばさよつばさ”です。毎回テーマの多彩さ、切り口の斬新さ、語り口のうまさで感心させられ、狭くてうるさい機内での時間が充実したものになっています。まさに短編の名手の面目躍如というべきでしょう。

    そして、今回読んだのが、文庫本化された”沙高楼奇譚−草原からの使者”という短編集です。


    (浅田次郎: 草原からの使者−沙高楼奇譚 文春文庫)

    これには沙高楼奇譚という、先行する著作があり、いわばその続編という形になっています。
    沙高楼という屋敷に集った人々が、毎回著名な人が語る秘話を聴くという設定です。作者はそうとは言っていないようですが、昔からある”百物語”という風習に似ているように感じます。そこで語られる話はどれも奇譚と呼ぶにふさわしい内容ですが、はじめありえないと思っていても、徐々に浅田次郎の語り口のうまさによって、まさにその場に居合わせて、体験している気にさせられてしまいます。
    文庫版の解説で自身語り口のうまさで定評がある有川浩が”その膂力に若輩作家はもはや震え上がるのみ...『精進せよ、未熟者』と笑みを含んだ声まで聞こえてきて、ははーっとひれ伏すしかない”と書いています。

    しかし、この短編の名手ともいうべき浅田次郎には、その一方で、日輪の遺産、新選組に材を取った”壬生義士伝””輪違屋糸里”という長編小説、さらには清朝末期の混乱の中に生きる人々の壮絶な生きざまを描いた”蒼穹の昴”(このあと中原の虹へと続く)という大河小説をものにしています。


    (浅田次郎: 蒼穹の昴 講談社)

    まさに長短いずれにも力を発揮できる稀有な作家というべきでしょう。
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