弘前りんご_新参者の宝塚日記

大阪から転勤で仙台8年、青森県弘前で21年暮らした関西人が、関西圏とはいえ、大阪とは違った土地の宝塚に住み、いわば新参者として暮らす中で、見聞きしたこと、思ったことをつれづれに書き綴って行きます。
<< 同期の桜の作曲家2人(西村朗と吉松隆)による、クラシック音楽の魅力を再発見する本(クラシック大作曲家診断 GAKKEN) | main | 油淋鶏(ユーリンチー)は好きですか? 私は大好きです (*^^*) _ つがるひろさき食堂にて。 >>
本自体が芸術品と成り得た、そんな幸せな時代がありました _ 辻邦生の ”嵯峨野明月記" を再読して。
0

    今秋の引っ越しまでにはまだ随分と時間があるんですが、時間があるときにと、ちょっとずつ荷物を整理をしています。

    しかし、思わぬものを見つけては見入ってしまって、片付けがなかなか捗らないってことありますよね、これが (^_^;)

    今日はそんな感じで、久しぶりに再会した本について。

     

    出版業界の不況が取りざたされる昨今。書店も廃業するところも増えてきています。

    ちょうど、弘前の紀伊国屋書店が閉店するという情報も入ってきました (^_^;)

     

    さて、そんななか、印刷された本を手にして読むより、タブレットやスマホで、読む時代になってきています。

    そうなると、本はバーチャルな存在になり、装丁、活字に価値を見出すことは無くなって行くのでしょうか。

    しかし、本自体が芸術品と成り得た幸せな時代がありました。

     

    嵯峨本、伊勢物語(wikipedia)

     

    戦国の世が終わり、江戸時代が始まるころ、角倉素庵が発案し、琳派の始祖の二人、能書家本阿弥光悦の版下、俵屋宗達の壮麗な装丁からなる、いわゆる嵯峨本。伊勢物語や徒然草などが出版されました。

     

     

    今回片付け作業の中で見つけたこの小説 ”嵯峨野明月記”は、嵯峨本を出版するに至る三者の、生い立ちの回想が彼ら自身の口から語られ、それがやがて三者の出会い、そして嵯峨本の出版に至る経緯を坦々と語られる形を取っています。

     

    初めて読んだのは30年前。ちょうど琳派の系譜に興味を持ち、俵屋宗達、尾形光琳の作品に心惹かれ始めた頃です。

    しかし、その時には気づかなかった(気づけなかった)のですが、辻邦生のこの文章の何と美しく、力強いことか。扱う最高の作品にふさわしい、最上の日本語の語り口であることに、今になって気づきました。

     

    決して奇をてらったような言葉を用いることなく、しかし的確にしかも含みを持たせた言葉のリズムに、魅了されてしまいました。最近の小説では、ストーリーの面白さを感じる作品はあっても、その語り口に心惹かれることはついぞありませんでした。

    改めて、日本語というのは美しいと感じました。

     

     

    ブログランキングに参加しています。皆さんのクリックで順位が決まります。  
    気に入ったら、このブログランキング(または白いボタン)を押してください。

     ご協力、ありがとうございます (*^^*

     

    #辻邦生 #嵯峨野明月記 #嵯峨本 #角倉素庵 #本阿弥光悦 #俵屋宗達 #美しい日本語 #引っ越しの荷物の整理で見つけて  

     

    ブログランキング URL: https://blog.with2.net/link/?1920861

     

    | 弘前りんご | 美術 | 23:49 | comments(1) | trackbacks(0) |
    私も嵯峨野明月記が大好きで、好きが高じて、世界中の皆さんの目に触れるようにと思い、英訳しました。まだ著作権継承者の許諾をいただけていない、というか、いただけそうもないのですが、許される範囲で、一部試訳として公開しました。
    http://wisteriafield.jp
    ご覧いただければ幸いです。
    | 藤田伊織 | 2019/05/08 4:10 PM |









    トラックバック機能は終了しました。
         12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31      
    << March 2024 >>
    + RECOMMEND
    失われた手稿譜 ヴィヴァルディをめぐる物語【電子書籍】[ フェデリーコ・マリア・サルデッリ ]
    失われた手稿譜 ヴィヴァルディをめぐる物語【電子書籍】[ フェデリーコ・マリア・サルデッリ ] (JUGEMレビュー »)
    (弘前りんご)

    自身もバロック音楽の研究者であり、演奏家であるサルデッリが書いた、”失われた手稿譜 ー ヴィヴァルディをめぐる物語 ー” では、ヴィヴァルディが亡くなった直後から漂流し始める、ヴィヴァルディが残した膨大な手稿譜が本当の主人公であり、小説の形をとっているものの、そこに書かれたことはほとんどが事実です。

    しかし、その手稿譜がたどったその後の運命は、数奇としか言いようのないものでした。

    手稿譜を借金の方に取ろうとする債権者、取られるのを防ごうとしたヴィヴァルディの弟。

    修道士会に寄付されたものの、その価値がわからない修道士たちは、それをごみのように扱い、教会の倉庫の奥に放り込でしまい、長い年月の眠りにつきます。

    その後その存在を知った貴族が個人のコレクションとして入手。

    研究し、その散逸を防ごうとした研究者と、骨董的価値にのみ注目するファシスト政府との攻防。

    いずれも手に汗握る展開で飽きさせません。

    最大の貢献者の一人、ジェンティーリが追われて大学を去るときの言葉

    ”正しきものは、とこしえに記憶される” が、心に染み入ります。
    + RECOMMEND
    旅屋おかえり [ 原田マハ ]
    旅屋おかえり [ 原田マハ ] (JUGEMレビュー »)
    ”旅屋おかえり”は、旅そのものが目的であり、生きがいの、そしてそれを仕事にしてしまった一人の女性の夢、挫折そして再生の物語です。

    旅屋とは、故あって自分は旅に出ることが叶わない依頼人に代わって旅をして、本人の代わりに希望の体験や目的を果たして、その旅の記録を依頼者に成果として届けるというもの。それを思い立ったのは偶然の出会いから。

    またタイトルのおかえりは、家に、故郷に戻ったときに掛けられる言葉、”おかえり” と、丘えりこの愛称、おかえりをもじったものです。そしてその言葉を聞きたくて旅に出るのです。

    旅屋の仕事としての旅によって、契約内容を遥かに超える成果(人間関係のもつれを解き、凍てつきを融かす)がもたらされるだけでなく、主人公、そしてそれを取り巻く人々の心までも癒やしてゆきます。

    そして成功するまでは故郷には帰れないと覚悟している主人公が、故郷で待つ母のおかえりという言葉を聞ける日も間もないというところで、小説は幕を閉じます。

    まさにハートウォーミングな小説。読後にじんわりと心があたたまる作品でした。
    + SELECTED ENTRIES
    + RECENT COMMENTS
    + CATEGORIES
    + ARCHIVES
    + Google Adsense
    + Google AdSense
    + Google AdSense
    + Google Adsense
    + Google AdSense
    + MOBILE
    qrcode
    + LINKS
    + PROFILE