弘前りんごの北のまほろば

司馬遼太郎の”街道をゆく”のタイトル”北のまほろば”に魅せられて、本州最北端の県にやってきました。日々見聞きしたこと、感じたこと、考えたことなどをつれづれなるままに綴ります。
おかえり、という言葉を聞きたくて私は旅に出る_原田マハ『旅屋おかえり』
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    皆さん、旅の目的はなんですか?

    出張? 観光? 傷心を癒すため?あるいは何かから逃げるため? (^_^;)

    人それぞれ、そして事情によりけりでしょうね。

    でも、この原田マハの小説 ”旅屋おかえり” の主人公は違います。

    旅そのものが目的であり、生きがいの、そしてそれを仕事にしてしまった一人の女性の夢、挫折そして再生の物語です。

     

     *そうそう、オープニングに、弘南鉄道、黒石、つゆ焼きそばが出てきたのには、ちょっとびっくり (^_^;)

     

    原田マハ ”旅屋おかえり” 集英社

     

    北海道の礼文島で高校まで育った主人公、丘えりこは、高校の東京への修学旅行でスカウトされ、アイドルを目指します。

    親兄弟や島の人々の期待を担って。そして成功して、故郷に錦を飾る日を夢見て。

     

    しかし、現実は厳しく、本人曰く、才能にも運にも恵まれないため、アイドルとして脚光を浴びること無く、十数年の時は過ぎてしまいました。今は、全国を旅する旅人として出演するテレビ番組のみで生活する日々。

    そして、その番組も不運な出来事から打ち切りに。

    そんな状況で、改めて自分が旅そのものが好きであることに気づき、それを活かせる仕事の形として、前代未聞の旅屋というものを始めます。

     

    旅屋とは、故あって自分は旅に出ることが叶わない依頼人に代わって旅をして、本人の代わりに希望の体験や目的を果たして、その旅の記録を依頼者に成果として届けるというもの。それを思い立ったのは偶然の出会いから。

    またタイトルのおかえりは、家に、故郷に戻ったときに掛けられる言葉、”おかえり” と、丘えりこの愛称、おかえりをもじったものです。

     

    その旅によって、契約内容を遥かに超える成果(人間関係のもつれを解き、凍てつきを融かす)がもたらされるだけでなく、主人公、そしてそれを取り巻く人々の心までも癒やしてゆきます。

    そして成功するまでは故郷には帰れないという主人公が、故郷で待つ母のおかえりという言葉を聞ける日も間もないというところで、小説は幕を閉じます。

     

    主人公はもちろんの事、彼女を取り巻く、キャラが立っていて、また愛すべき人たちがとても魅力的だということにも触れておくべきでしょう。彼女をスカウトした、そして彼女が唯一の所属タレントである事務所の社長。見かけは強面ながら、情に熱く、ちゃらんぽらんに見えて、おかえりをしっかりとサポートしています。そんな人達に支えられて、主人公は挫折のあとに再生への道を自ら見出します。

     

    さて、原田マハの作品は、初期の ”楽園のカンヴァス”に出会って以後、その美術にまつわる、“暗幕のゲルニカ”、“リーチ先生”、“たゆたえども沈ます”、”ジベルニーの食卓”、“モダン”などなどを次々と読んで魅了されて来ましたが、実は原田マハの小説には、それとは違うジャンルの作品群があります。

    たとえば、“本日はお日柄もよく” はスピーチライターと言う仕事に情熱を燃やす女性の奮闘の物語。

    おなじ人がこうもタッチを変えてかけるものかと感心してしまうのですが。

    “旅屋おかえり”もそのひとつでしょう。

    まさにハートウォーミングな小説。読後にじんわりと心があたたまる作品でした。

    原田マハのこれまでのブログ記事

    モダン

    たゆたえども沈まず

    サロメ

    ジヴェルニーの食卓

    リーチ先生

     

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    #原田マハ #小説 #旅屋おかえり #弘南鉄道 #黒石 #つゆ焼きそば #ハートウォーミング #楽園のカンヴァス #暗幕のゲルニカ #リーチ先生 #たゆたえども沈ます #ジベルニーの食卓 #モダン #本日はお日柄もよく

     

     

    | 弘前りんご | 文学 | 06:20 | comments(0) | trackbacks(0) |
    素敵なエール_森絵都『カラフル』
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      その本は、ずいぶんと前から我が家の本棚にあったような気がします。

      そして、何度か手に取った記憶もあるのです。

      しかし、最初の数ページを読んで、なぜか元の場所に戻したらしく、内容についても、また読み通した記憶もありませんでした。

       

      森絵都『カラフル』文春文庫

       

      それがなぜか、そんな本を幾度目かに手に取った今回は、一気に最後まで読み通してしまい、 読み終えて久しぶりの読み応えというものに感じ入っている自分がいました。出会いって大切ですね。

       

      最初の方の出会いでの印象、と云っても数ページ程度しか読んでいなかったのだけれど、SF風のライトノベルか?、と言ったもので、さほど心惹かれなかったのです。

       

      しかし、今回ある程度読み進めて行って印象はガラリと変わってしまいました。

      ごく平凡に見える家族が、実はそれぞれに問題を抱えて、何かをきっかけに、その家庭が崩壊しても不思議ではないというものに。

       

      ところが、更にその印象が実は一面的なものであって、更にまた違った他の面を持つことが更に読み進めるとわかってきたのです。

       

      自殺を図った少年にとって、その家庭は灰色に見えたのだろうけれど、実はいろんな色を持つ(カラフル?)ということが。

       

      自分は孤独だと思っていた少年が、実はその家庭にとって欠かせない一員だったことに、気づいてゆく過程を、軽やかな筆致で描いてゆきます。しかし内容はかなり重いものです。

       

      そして、その少年と同じ様な境遇の悩める少年・少女に、いや現代の大人にとっても、小説の最後は、力強いエールになっています。

      久しぶりに、良い後味の小説を読んだという強い印象でした。

       

       

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      #森絵都 #カラフル #自殺 #いじめ #再生 #家族 #エール

       

      | 弘前りんご | 文学 | 06:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
      目からうろこシリーズ (3)_ 謎解きの面白さに満ちた 『ねずさんの日本の心で読み解く「百人一首」』
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        謎は身近にある。

        なんだかテレビのサスペンスのキャッチみたいで恐縮ですが。

         

        百人一首は、日本人の最も親しまれた文学作品の一つと言っていいでしょう。

         

        漫画、それを元にした映画『ちはやふる』の人気から、百人一首のかるたを使った、競技かるたのブームも起こっていますね。

         

        800年前に編まれて以来ずっと親しまれてきて、大変馴染みのある作品でありながら、実は編者(藤原定家)の意図、そして作品の真価が必ずしも正しく捉えられていないと著者は嘆き、この本を出版することにしたとのこと。

         

         

        確かにおぼろげながらも学校で習った百人一首の解説は、古今の名歌の中から藤原定家が、自身の美意識に基づいて100首選んでまとめた、といったところです。現在出回っている百人一首の解説本も似たりよったり。

         

        しかし、宮中で乱闘騒ぎを起こしたり、天皇から勧められても気に入らない自作を頑として歌集に入れなかったりと、気性が激しく、また美意識の高い藤原定家が、なんの脈略もなく、ただ気に入った歌を100首集めていっちょ上がりなどということがあるはずがない。

         

        そんな考えから、著者は歌い手と歌の選出、その並べ方を徹底的に解析し、その結果明らかになったことを解説していきます。

         

        すなわち、歌人や歌の選定、配列等の構成が実に綿密に行われ、100首全体で一つの壮大な歌のようになっているというのです。

         

        たとえば、最初の4首、天智天皇、持統天皇、柿本人麿、山部赤人の歌と並び方を見ただけで、藤原定家の意図は明白だとしています。

         

        天智天皇の歌は、「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」

        これは一般に言われているような想像の歌ではなく、神事であるとしても実際に天皇が農作業をし、その時雨にあって、雨宿りしたときに自分の衣服が濡れたという、実体験に基づいた歌だとしています。

         

        同じことは持統天皇の歌「春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」にもいえて、実体験ならではの心がこもっているとしています。

         

        そして、天皇が二人続けば、次は高位の関白であるとか、高僧になりそうなのに、身分としては非常に低い柿本人麻呂の歌「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」と置いたのは、定家が地位ではなく、歌の価値で選び、ふさわしい位置においていることの証左と、著者は考えています。

         

        またこの歌は、独り寝の寂しさなどを歌ったつまらないものではなく、寝る間も惜しんで創作に励んでいる人麿の、使命感と高揚感を表しているというのが、納得の行く解釈だと言えます。

         

        そして、その柿本人麻呂のうたが、理知的に考え抜いたものであるのに対して、

        山部赤人の歌「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ」の歌は、鋭い感性と立体的な視感に基づく歌だとしています。たしかに、赤人が目にした壮大な眺めが読むものにも伝わるように思われます。

         

        以降、100首の真価、魅力、そしてそれに盛られた作者の思い、時代背景との関わりなどが綴られていきます。

         

        まさに目からウロコ、百人一首の見方が変わる一冊です。

         

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        #百人一首 #小名木 #謎解き #天智天皇 #持統天皇 #柿本人麻呂 #山部赤人

         

        | 弘前りんご | 文学 | 06:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
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        (弘前りんご)
        原田マハの短編小説集”モダン”は、MOMA(ニューヨーク近代美術館)を舞台にした作品集です。
        私にとって、おそらく日本人にとっても、印象深いのは、第一章”クリスティーナの世界”ではないでしょうか。
        タイトルは、同名のあのアンドリュー・ワイエスの名作から取ったもの。
        下半身麻痺の女性が、草原を這って、我が家に向かって進もうとしている光景を描いたもの。
        小説では、2011年3月11日の東日本大震災のときに、福島県立美術館にこの作品が、アンドリュー・ワイエス展のために貸し出されていて、MOMAの委員会が、作品を守るために即回収を決め、MOMAのコーディネーターの職にあった日系女性職員杏子を派遣するというストーリー。
        この作品を日本に誘致するために多大な努力を払った現地学芸員伸子と、本意は回収するには及ばないと思っても、上からの命によって福島に向かわざるを得ない杏子の心の交流を描いています。
        救いは、杏子が福島のためにワイエスの作品を近い将来、再び貸し出せるようにすると決意するところです。
        そしてそれはこの絵の、絶望的な状況にあっても、希望を捨てず前に進もうとする女性の強い意志の力に合い通じるものがあるのではないでしょうか。
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        旅屋おかえり [ 原田マハ ]
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        ”旅屋おかえり”は、旅そのものが目的であり、生きがいの、そしてそれを仕事にしてしまった一人の女性の夢、挫折そして再生の物語です。

        旅屋とは、故あって自分は旅に出ることが叶わない依頼人に代わって旅をして、本人の代わりに希望の体験や目的を果たして、その旅の記録を依頼者に成果として届けるというもの。それを思い立ったのは偶然の出会いから。

        またタイトルのおかえりは、家に、故郷に戻ったときに掛けられる言葉、”おかえり” と、丘えりこの愛称、おかえりをもじったものです。そしてその言葉を聞きたくて旅に出るのです。

        旅屋の仕事としての旅によって、契約内容を遥かに超える成果(人間関係のもつれを解き、凍てつきを融かす)がもたらされるだけでなく、主人公、そしてそれを取り巻く人々の心までも癒やしてゆきます。

        そして成功するまでは故郷には帰れないと覚悟している主人公が、故郷で待つ母のおかえりという言葉を聞ける日も間もないというところで、小説は幕を閉じます。

        まさにハートウォーミングな小説。読後にじんわりと心があたたまる作品でした。
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