弘前りんごの北のまほろば

司馬遼太郎の”街道をゆく”のタイトル”北のまほろば”に魅せられて、本州最北端の県にやってきました。日々見聞きしたこと、感じたこと、考えたことなどをつれづれなるままに綴ります。写真、音楽、そして本好き(万葉集)なアラ還です。
読み直してみて、再び感動 _ 失われた手稿譜:ヴィヴァルディをめぐる物語(フェデリーコ・マリア・サルデッリ)
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    今朝1つ目のブログは読書に関するものでした。

    それを書くにあたって、最近読んだ本を再び手にとっているうちに、この本をまた読んでしまい、また感動してしまいました ^^;)
    それは、自身が演奏家で、音楽史に関する著作もある、フェデリーコ・マリア・サルデッリの ”失われた手稿譜_ヴィヴァルディをめぐる物語”です。

     

     

    ヴァイオリン協奏曲集『四季』の名と共に、今や知らない人はいないと言ってよい存在の作曲家ヴィヴァルディ。バロック音楽の代名詞の一つなっています。

    しかし、その彼がこれほどまでの名声を再び獲得するには、実に長い時間と多くの人々の熱意、欲望のかかわりがありました。

     

    なぜ再びと書いたか。それはヴィヴァルディが、生前は一世を風靡するヴェネツィア楽派の人気作曲家だったのですが、その後ナポリ楽派の台頭により、人気を失ってしまったからです。

     

    ちなみに、ナポリ楽派といえば、当時世界の3大都市の一つ、ナポリを舞台に活躍した新しい楽派。スカルラッティを始祖の一人として、ペルゴレージ、パイジェッロ、チマローザなどが活躍し、その影響はイタリアを超えて、グルック、モーツァルトにまで及んだとされています。ヴェネツィアの都市国家としての低迷、ナポリの台頭という歴史的背景も無縁ではないように思います。

     

    その再起を掛けて出かけたヴィヴァルディは、ウィーンで失意のうちに客死し、その後すっかり忘れ去られてしまいました。

     

    ヴィヴァルディ(wikipedia)

     

    そんな彼が再び注目を浴び、再評価が進んだのは、奇跡ともいえる経緯でした。

    存在は噂としてはあったもののずっと行方不明であった、その膨大な手稿譜のコレクションが世に出たのは、第二次世界大戦が起こる少し前の、不穏な社会情勢の頃。

     

    ファシズム台頭著しいイタリアにおいて、彼の再評価に多大な貢献をしたジェンティーリ教授は、イタリア人でないという理由で、その地位を奪われてしまいました。

     

    自身もバロック音楽の研究者であり、演奏家であるサルデッリが書いた、”失われた手稿譜 ー ヴィヴァルディをめぐる物語 ー” では、ヴィヴァルディが亡くなった直後から漂流し始める、ヴィヴァルディが残した膨大な手稿譜が本当の主人公であり、小説の形をとっているものの、そこに書かれたことはほとんどが事実です。

     

    しかし、その手稿譜がたどったその後の運命は、数奇としか言いようのないものでした。

     

    手稿譜を借金の方に取ろうとする債権者に対して、身を挺して取られるのを防ごうとしたヴィヴァルディの弟。

     

    なんとか修道士会に寄付されたものの、その価値がわからない修道士達によってごみのように扱われ、教会の倉庫の奥に放り込まれたまま、長い年月の眠りにつきます。

     

    その後その存在を知った貴族が個人のコレクションとして入手したところから、また大きな展開が始まります。

     

    それに出会い、研究してその散逸を防ごうとした研究者と、骨董的価値にのみ注目するファシスト政府との攻防。

     

    いずれも手に汗握る展開で飽きさせません。

     

    最大の貢献者の一人、ジェンティーリが追われて大学を去るときの言葉

    ”正しきものは、とこしえに記憶される” が、心に染み入ります。

     

     * 昨年同日の記事の改訂版です。

     

     


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    #ヴィヴァルディ #手稿譜 #サルデッリ #ヴェネティア #数奇な運命 #再評価 #ナポリ #ナポリ楽派  

     

    * 縁あってこちらに立ち寄ってくださった記念に掲示板に書き込みを宜しく。

      弘前りんごの"北のまほろば掲示板

    | 弘前りんご | 文学 | 14:07 | comments(0) | trackbacks(0) |
    これで本当に最後なんですか? 塩野七生 ギリシャ人の物語 III _ アレクサンダー大王とその父フィリップス
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      塩野七生さんの著作との出会いは、海の都の物語(ヴェネツィア共和国の1000年、1980年刊行)でした。まだ大学院生だった頃です。

      膨大な資料の渉猟に基づき、歴史的観点のみならず、建築や庶民の生活などから、多角的にヴェネツィアを捉えているのがとても強烈な印象でした。学術書なのか、小説なのか、いやエッセイなのか、いずれにしろ、それまでに出会ったことのないスタイルの作品で、魅了されたのを覚えています。

      ヴェネツィア共和国は、異民族に追われて、葦の茂る潟に逃げた人々が西暦500年頃に立てた国です。資源を持たない、大国に囲まれた小さな国が、海洋国家として、いかにしてヨーロッパで、政治経済、そして文化の覇権を築くことができたのか、検討、実証してゆく手法に惹きつけられてゆきました。そしてもちろん、その勢いを何故失うに至ったのかまで描いています。

      多分に日本の過去、現状、未来に重ね合わせて読んでいたように思います。

       

      さて、そんな塩野さんが、1992年から刊行を始めたローマ人の物語。ヴェネツィア共和国誕生の頃から遡ること1000年ほど前に誕生した古代ローマのやはり1000年に及ぶ歴史を描いた、15巻に及ぶ大作です。

       

       

      毎年一作づつ刊行されるのを、待ち切れない思いでいたのを思い出します。

       

      その作品は、海の都の物語と同様、いやそれ以上に、膨大な資料に基づき、古代国家ローマの生い立ちから終焉までを描いています。歴史の学術書と違うのは、その中に登場する、例えばハンニバル、スキピオ、カエサル、アウグストゥスといったプレイヤー達に、肉声で語らせていること。その一語一句の魅力は、資料に基づいて居るにしても、塩野さんの筆力に負うところでしょう。

       

      その刊行が2006年に終わって、ある意味落ち穂拾い的な、短い作品が単発的にでて、もうこういった大作は出ないのかと思っていましたが、2015年から、ギリシア人の物語が刊行され始めました。やはり年1巻のペースで、2017年に最後の第3巻(新しき力、アレキサンダー大王)が出ました。

       

       

      民主政治のパイオニアだと捉えられている古代ギリシアの内実を克明に描き、なぜそんなギリシアが内部分裂によって、衰退していったかを解き明かします。ペリクレスの手腕によって、かろうじて保たれたギリシアの民主主義。彼の死によってアテネの凋落が始まります。

      そして、最後の第三巻は、ギリシアの古代民主政に引導をわたし、ヘレニズム文化という偉大な文化をもたらした、大王アレキサンダーと、その父フィリップの物語です。

       

      塩野さん自身の言葉で、大作はこれを持って最後にすると語られました。

      本当にこれで最後なんだと、喪失感のようなものを感じました。

       

       

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      #塩野七生 #海の都の物語 #ローマ人の物語 #ギリシア人の物語 #アレキサンダー大王 #マケドニア王フィリップス  

       

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      | 弘前りんご | 文学 | 23:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
      人々の再生の物語 _ 小説 ”まぐだら屋のマリア”(原田マハ 作 幻冬舎文庫版 )
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        今回はお正月休みの間に一気に読んだ作品の紹介です。

         

        このまぐだら屋のマリアは、作品のタイトルから想像されるように、新約聖書の様々なエピソードにインスパイアされて書かれた作品ではないかと思います。

         

        原田マハ:まぐだら屋のマリア(幻冬舎文庫)

         

        登場人物のいくつかの名前も、明らかに聖書の登場人物から取っています。

        たとえば、東京の高級料亭の調理人見習いである、主人公 紫紋(イエスの第一の弟子で、初代教皇となったシモン・ペテロから

        そしてヒロイン、マリア(本名:有馬りあ、彼女の食堂の客からの呼び名。聖母マリアではなく、おそらくイエスに付き従い、ゴルゴダの丘の処刑に接し、その後の復活も目にした、マグダラのマリア)

         

        紫紋も、そして尽果(つきはて)と言う、かろうじて、バスだけは来る、これ以上はない辺境の地に、まぐだら屋と言う食堂を切り盛りするマリアも、共に罪深い過去を持っています。その過去から逃れるため、死に場所を求めて、紫紋はこの尽果にたどり着きます。そしてマリアもまた、自身の贖罪のためにここにやってきた過去を持ちます。

         

        その二人が天の配剤のごとくに出会い、一緒に食堂を営み、人々に食べる喜びを提供することで、二人もまた最後には再生してゆきます。それは罪が消えるわけではなく、忘れようとして忘れられず、もがいて来たものを、あるがままに受け入れると言う気持ちになったことによってでした。

         

        原田マハの作品は、美術を題材にした斬新な作品群によって、注目を浴びてきましたが、それ以外にも多彩なカテゴリーの作品を描いています。

        このまぐだら屋のマリアは、たとえば、

        本日はお日柄もよく”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=1940)や、

        旅屋おかえり”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=2615

        のような、美術にテーマを置いていない一連の作品群に分類されるかと思います。

         

        いずれにしても、原田マハの多彩な作風に魅了されますね。

         

         

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        #原田マハ #まぐだら屋のマリア #尽き果て #食堂 #聖書 #贖罪 #赦し

         

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        | 弘前りんご | 文学 | 23:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
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          てんし@弘前 (10/14)
        • 今日9月11日は、クラブサン(チェンバロ)の大家、フランソワ・クープラン(大クープラン)の命日。
          弘前りんご (09/12)
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          てんし (09/12)
        • 黒石を歩き倒す?(3) (^_^;)
          菊地 尚則 (08/19)
        • 演奏会の合間に、夏カレーに惹かれて、イトヨの食堂街へ。オーブン亭(イトーヨーカ堂弘前8F)
          弘前りんご (08/12)
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          今井 正治 (08/12)
        • 青森県は、大蒜(ニンニク)の一大生産地、ではニンニクの芽は?
          弘前りんご (07/19)
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          yoko (07/19)
        • ランチさ迷わない人 ^^;)_ たまには家庭で袋麺を。日本の加工食品の豊富さ、技術の高さに感心。
          てんし (07/18)
        • ランチさ迷わない人 ^^;)_ たまには家庭で袋麺を。日本の加工食品の豊富さ、技術の高さに感心。
          弘前りんご (07/18)
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