弘前りんごの北のまほろば

司馬遼太郎の”街道をゆく”のタイトル”北のまほろば”に魅せられて、本州最北端の県にやってきました。日々見聞きしたこと、感じたこと、考えたことなどをつれづれなるままに綴ります。
人々の再生の物語 _ 小説 ”まぐだら屋のマリア”(原田マハ 作 幻冬舎文庫版 )
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    今回はお正月休みの間に一気に読んだ作品の紹介です。

     

    このまぐだら屋のマリアは、作品のタイトルから想像されるように、新約聖書の様々なエピソードにインスパイアされて書かれた作品ではないかと思います。

     

    原田マハ:まぐだら屋のマリア(幻冬舎文庫)

     

    登場人物のいくつかの名前も、明らかに聖書の登場人物から取っています。

    たとえば、東京の高級料亭の調理人見習いである、主人公 紫紋(イエスの第一の弟子で、初代教皇となったシモン・ペテロから

    そしてヒロイン、マリア(本名:有馬りあ、彼女の食堂の客からの呼び名。聖母マリアではなく、おそらくイエスに付き従い、ゴルゴダの丘の処刑に接し、その後の復活も目にした、マグダラのマリア)

     

    紫紋も、そして尽果(つきはて)と言う、かろうじて、バスだけは来る、これ以上はない辺境の地に、まぐだら屋と言う食堂を切り盛りするマリアも、共に罪深い過去を持っています。その過去から逃れるため、死に場所を求めて、紫紋はこの尽果にたどり着きます。そしてマリアもまた、自身の贖罪のためにここにやってきた過去を持ちます。

     

    その二人が天の配剤のごとくに出会い、一緒に食堂を営み、人々に食べる喜びを提供することで、二人もまた最後には再生してゆきます。それは罪が消えるわけではなく、忘れようとして忘れられず、もがいて来たものを、あるがままに受け入れると言う気持ちになったことによってでした。

     

    原田マハの作品は、美術を題材にした斬新な作品群によって、注目を浴びてきましたが、それ以外にも多彩なカテゴリーの作品を描いています。

    このまぐだら屋のマリアは、たとえば、

    本日はお日柄もよく”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=1940)や、

    旅屋おかえり”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=2615

    のような、美術にテーマを置いていない一連の作品群に分類されるかと思います。

     

    いずれにしても、原田マハの多彩な作風に魅了されますね。

     

     

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    #原田マハ #まぐだら屋のマリア #尽き果て #食堂 #聖書 #贖罪 #赦し

     

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    | 弘前りんご | 文学 | 23:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
    この小説の主人公は一体誰なんだ。あっ、そうか...._ 異邦人(いりびと)原田マハ 著
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      常盤貴子が、京都老舗の和菓子屋の若主人を演じ、京都人から見た(内側から見た)京都の日常が描かれたドラマ ”京都人の密かな愉しみ” 好きな番組でした。

       

      一方、原田マハ ”異邦人(いりびと)” は、外側から見た京都なのかも。

       

       

      幾重にも折り重ねられたトラップ。絡み合う人間関係。

      美術を巡る小説でありながら、二転三転して幾度も読むものに息を飲ませ、最後にもつれた糸が一気に解けるサスペンスのようでもあります。

      楽園のキャンバス”を読んだ時の興奮が蘇りました。

       

      しかし、今回の舞台は京都。

      タイトルのカッコ内の”いりびと”とは、京都に暮らす人であっても、京都生まれの京都育ちではない人をそう呼ぶそうです。今の時代、誰でも京都に行くこと(観光)は出来て、そこで暮らし始めた人(いりびと)も、それなりに楽しめる街ではあります。

      しかし、そのうち越えられない見えないバリアがあることに気づきます。

      その中に入るには、中から招いて貰う必要があります。もちろん招かれる資格があればですが。

       

      このタイトルはそれ以上の意味が込められているようです。

       

      この小説における中の人とは、なにを置いても美に仕える人でしょう。

      そして異邦人(いりびと)の中から、選ばれ招かれる資格のある人とは....

       

      日々のしがらみの中で、ルールや規範を第一に生きている身からすれば、菜穂の生き方はなんとも羨ましい、いや、妬ましい気持ちにもなります。

      主人公は若い女性二人。一人はもって生まれた審美眼で、新たな才能を見出す才に恵まれた私設美術館の学芸員で副館長。そしてもう一人はまだ無名だけれど、天分をきらめかせる画家。その二人の運命的な出会いから、二人を取り巻く人々の人生がきしみ、崩れてゆきます。

       

      しかし、この小説の本当の主人公は....

      それは各自読み取るべきことでしょう。

       

      *本作品は、2018年 第六回 京都本大賞に選ばれました。

       

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      #原田マハ #異邦人 #いりびと #美に仕える #市井の人々 #京都 #学芸員 #画家 #運命的出会い

       

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      | 弘前りんご | 文学 | 23:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
      もっと早くに出会いたかった _ 沢木耕太郎の3冊目の全エッセイ集 ”銀河を渡る” _
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        横浜国立大学を卒業して、銀行に就職が決まったのに、なんと出社初日の信号待ちしている間に、退職することに決めたんだそうです ^^;)

        それがなければ、エッセイスト、沢木耕太郎は誕生しなかった。

         

        沢木耕太郎は、旅とスポーツをテーマにしたエッセイを書き綴ってきた作家ですね。最近はフィクションの作品も発表しているようですが。スポーツならともかく、私も好きな旅なら接点があっても不思議はなかったはずですが、これまでなぜか私の視野に入っていなかった作家です。

         

        では何故今回読もうと思ったか、出会ったかですが、全エッセイ集と銘打ちながら、3冊目って何よと、大阪人としては突っ込まざるを得ないキャッチフレーズに引っかかったからに、ほかなりません ^^;)

         

        そこで調べてみると、これまでに10年毎に、一冊ずつの計2冊、それまで発表したエッセイをまとめて全エッセイ集として出してきたこと。それが三冊目は25年も時間が空いてしまって、これ以上まとめないと散逸してしまうという危機感からまとめたということがわかりました。

         

        沢木耕太郎 全エッセイ ”銀河を渡る” 新潮社

         

        そんなこんなで関わりを持ってしまったので、この三冊目の全エッセイ集 ”銀河を渡る” を読んでみようと密林に注文したというわけです。

        しかし、読んでみて、その文体への親和感が非常に高く、もっと前に読んでおきたかったと、今更ながらにちょっと後悔してしまいました。さりげない、しかし確かな目で見据えた上での的確な表現が、魅力と言えます。その目は一般のエッセイストというより、真のジャーナリストの目、真実を追い求めて飽きない精神がベースにあるのでしょう。

         

        今回のエッセイ集の巻頭の文で、若い頃の回想を綴っているのですが、それが実に印象的でした。

        まだ駆け出しの作者が初めて海外に出てその街のレストランで、言葉が通じないことに戸惑っている時に、偶然近くにいた女性が、彼に的確に、しかし押し付けがましくなく指示、示唆を与えてくれたという場面がでてきました。

        それが彫刻家、宮脇愛子だったことをその後知り、自分もかく有りたいと願ったというのです。

        その宮脇愛子もその昔、シュールレアリスト、ダダイストである彫刻家、画家、写真家のマン・レイと出会い、薫陶を受けていたのですね。

         

        マン・レイ (wikipedia)

         

        なんというか、知性の系譜というか、そういった人と人とのつながりというのが、実に素敵で、羨ましく感じました。

         

        そうそう、彼の代表作の一つに、”キャパの十字架”があります。

        あの戦争写真の金字塔的作品と言われる写真を発表して、一躍報道写真家としてスターの座に躍り出たロバート・キャパ

        しかし、その写真については、以前からいろいろと疑義が呈されてきました。

        沢木耕太郎は、その一つ一つを検証し、世界の注目を浴びたあの作品の真相を、ミステリーの探偵のごとく解き明かしてゆきます。しかし、決してその虚像を糾弾するという姿勢ではなく、祭り上げられてしまって、降りるに降りられなくなったものの悲しみに、実は寄り添うように描いています。

        そんなところにも、沢木耕太郎の真心のようなものを感じざるを得ません。

         

        今回のエッセイ集の表紙に、レオナール藤田の子供の絵(バガボンド)が使われているのも象徴的です。

         

        レオナール・フジタ バガボンド(小さな職人)

         

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        #沢木耕太郎 #エッセイ #旅 #スポーツ #宮脇愛子 #マン・レイ #知性の系譜 #ロバート・キャパ #キャパの十字架 #ミステリー #探偵 #レオナール・フジタ #バガボンド

         

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        | 弘前りんご | 文学 | 23:58 | comments(0) | trackbacks(0) |
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        (弘前りんご)
        原田マハの短編小説集”モダン”は、MOMA(ニューヨーク近代美術館)を舞台にした作品集です。
        私にとって、おそらく日本人にとっても、印象深いのは、第一章”クリスティーナの世界”ではないでしょうか。
        タイトルは、同名のあのアンドリュー・ワイエスの名作から取ったもの。
        下半身麻痺の女性が、草原を這って、我が家に向かって進もうとしている光景を描いたもの。
        小説では、2011年3月11日の東日本大震災のときに、福島県立美術館にこの作品が、アンドリュー・ワイエス展のために貸し出されていて、MOMAの委員会が、作品を守るために即回収を決め、MOMAのコーディネーターの職にあった日系女性職員杏子を派遣するというストーリー。
        この作品を日本に誘致するために多大な努力を払った現地学芸員伸子と、本意は回収するには及ばないと思っても、上からの命によって福島に向かわざるを得ない杏子の心の交流を描いています。
        救いは、杏子が福島のためにワイエスの作品を近い将来、再び貸し出せるようにすると決意するところです。
        そしてそれはこの絵の、絶望的な状況にあっても、希望を捨てず前に進もうとする女性の強い意志の力に合い通じるものがあるのではないでしょうか。
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        まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)
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        原田 マハ
        この"まぐだら屋のマリア"は、作品のタイトルから想像されるように、新約聖書の様々なエピソードにインスパイアされて書かれた作品ではないかと思います。

        登場人物のいくつかの名前も、明らかに聖書の登場人物から取っています。

        たとえば、東京の高級料亭の調理人見習いである、主人公 紫紋(イエスの第一の弟子で、初代教皇となったシモン・ペテロから)。

        そしてヒロイン、マリア(本名:有馬りあ、彼女の食堂の客からの呼び名。聖母マリアではなく、おそらくイエスに付き従い、ゴルゴダの丘の処刑に接し、その後の復活も目にした、マグダラのマリア)。

        紫紋も、そして尽果(つきはて)と言う、かろうじて、バスだけは来る、これ以上はない辺境の地に、まぐだら屋と言う食堂を切り盛りするマリアも、共に罪深い過去を持っています。その過去から逃れるため、死に場所を求めて、紫紋はこの尽果にたどり着きます。そしてマリアもまた、自身の贖罪のためにここにやってきた過去を持ちます。

        その二人が天の配剤のごとくに出会い、一緒に食堂を営み、人々に食べる喜びを提供することで、二人もまた最後には再生してゆきます。それは罪が消えるわけではなく、忘れようとして忘れられず、もがいて来たものを、あるがままに受け入れると言う気持ちになったことによってでした。

        原田マハの作品は、美術を題材にした斬新な作品群によって、注目を浴びてきましたが、それ以外にも多彩なカテゴリーの作品を描いています。

        このまぐだら屋のマリアは、たとえば、

        ”本日はお日柄もよく”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=1940)や、

        ”旅屋おかえり”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=2615)

        のような、美術にテーマを置いていない一連の作品群に分類されるかと思います。

        いずれにしても、原田マハの多彩な作風に魅了されますね。
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        旅屋おかえり [ 原田マハ ]
        旅屋おかえり [ 原田マハ ] (JUGEMレビュー »)
        ”旅屋おかえり”は、旅そのものが目的であり、生きがいの、そしてそれを仕事にしてしまった一人の女性の夢、挫折そして再生の物語です。

        旅屋とは、故あって自分は旅に出ることが叶わない依頼人に代わって旅をして、本人の代わりに希望の体験や目的を果たして、その旅の記録を依頼者に成果として届けるというもの。それを思い立ったのは偶然の出会いから。

        またタイトルのおかえりは、家に、故郷に戻ったときに掛けられる言葉、”おかえり” と、丘えりこの愛称、おかえりをもじったものです。そしてその言葉を聞きたくて旅に出るのです。

        旅屋の仕事としての旅によって、契約内容を遥かに超える成果(人間関係のもつれを解き、凍てつきを融かす)がもたらされるだけでなく、主人公、そしてそれを取り巻く人々の心までも癒やしてゆきます。

        そして成功するまでは故郷には帰れないと覚悟している主人公が、故郷で待つ母のおかえりという言葉を聞ける日も間もないというところで、小説は幕を閉じます。

        まさにハートウォーミングな小説。読後にじんわりと心があたたまる作品でした。
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