弘前りんごの北のまほろば

司馬遼太郎の”街道をゆく”のタイトル”北のまほろば”に魅せられて、本州最北端の県にやってきました。日々見聞きしたこと、感じたこと、考えたことなどをつれづれなるままに綴ります。写真、音楽、そして本好き(万葉集)なアラ還です。
これで本当に最後なんですか? 塩野七生 ギリシャ人の物語 III _ アレクサンダー大王とその父フィリップス
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    塩野七生さんの著作との出会いは、海の都の物語(ヴェネツィア共和国の1000年、1980年刊行)でした。まだ大学院生だった頃です。

    膨大な資料の渉猟に基づき、歴史的観点のみならず、建築や庶民の生活などから、多角的にヴェネツィアを捉えているのがとても強烈な印象でした。学術書なのか、小説なのか、いやエッセイなのか、いずれにしろ、それまでに出会ったことのないスタイルの作品で、魅了されたのを覚えています。

    ヴェネツィア共和国は、異民族に追われて、葦の茂る潟に逃げた人々が西暦500年頃に立てた国です。資源を持たない、大国に囲まれた小さな国が、海洋国家として、いかにしてヨーロッパで、政治経済、そして文化の覇権を築くことができたのか、検討、実証してゆく手法に惹きつけられてゆきました。そしてもちろん、その勢いを何故失うに至ったのかまで描いています。

    多分に日本の過去、現状、未来に重ね合わせて読んでいたように思います。

     

    さて、そんな塩野さんが、1992年から刊行を始めたローマ人の物語。ヴェネツィア共和国誕生の頃から遡ること1000年ほど前に誕生した古代ローマのやはり1000年に及ぶ歴史を描いた、15巻に及ぶ大作です。

     

     

    毎年一作づつ刊行されるのを、待ち切れない思いでいたのを思い出します。

     

    その作品は、海の都の物語と同様、いやそれ以上に、膨大な資料に基づき、古代国家ローマの生い立ちから終焉までを描いています。歴史の学術書と違うのは、その中に登場する、例えばハンニバル、スキピオ、カエサル、アウグストゥスといったプレイヤー達に、肉声で語らせていること。その一語一句の魅力は、資料に基づいて居るにしても、塩野さんの筆力に負うところでしょう。

     

    その刊行が2006年に終わって、ある意味落ち穂拾い的な、短い作品が単発的にでて、もうこういった大作は出ないのかと思っていましたが、2015年から、ギリシア人の物語が刊行され始めました。やはり年1巻のペースで、2017年に最後の第3巻(新しき力、アレキサンダー大王)が出ました。

     

     

    民主政治のパイオニアだと捉えられている古代ギリシアの内実を克明に描き、なぜそんなギリシアが内部分裂によって、衰退していったかを解き明かします。ペリクレスの手腕によって、かろうじて保たれたギリシアの民主主義。彼の死によってアテネの凋落が始まります。

    そして、最後の第三巻は、ギリシアの古代民主政に引導をわたし、ヘレニズム文化という偉大な文化をもたらした、大王アレキサンダーと、その父フィリップの物語です。

     

    塩野さん自身の言葉で、大作はこれを持って最後にすると語られました。

    本当にこれで最後なんだと、喪失感のようなものを感じました。

     

     

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    #塩野七生 #海の都の物語 #ローマ人の物語 #ギリシア人の物語 #アレキサンダー大王 #マケドニア王フィリップス  

     

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    | 弘前りんご | 文学 | 23:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
    人々の再生の物語 _ 小説 ”まぐだら屋のマリア”(原田マハ 作 幻冬舎文庫版 )
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      今回はお正月休みの間に一気に読んだ作品の紹介です。

       

      このまぐだら屋のマリアは、作品のタイトルから想像されるように、新約聖書の様々なエピソードにインスパイアされて書かれた作品ではないかと思います。

       

      原田マハ:まぐだら屋のマリア(幻冬舎文庫)

       

      登場人物のいくつかの名前も、明らかに聖書の登場人物から取っています。

      たとえば、東京の高級料亭の調理人見習いである、主人公 紫紋(イエスの第一の弟子で、初代教皇となったシモン・ペテロから

      そしてヒロイン、マリア(本名:有馬りあ、彼女の食堂の客からの呼び名。聖母マリアではなく、おそらくイエスに付き従い、ゴルゴダの丘の処刑に接し、その後の復活も目にした、マグダラのマリア)

       

      紫紋も、そして尽果(つきはて)と言う、かろうじて、バスだけは来る、これ以上はない辺境の地に、まぐだら屋と言う食堂を切り盛りするマリアも、共に罪深い過去を持っています。その過去から逃れるため、死に場所を求めて、紫紋はこの尽果にたどり着きます。そしてマリアもまた、自身の贖罪のためにここにやってきた過去を持ちます。

       

      その二人が天の配剤のごとくに出会い、一緒に食堂を営み、人々に食べる喜びを提供することで、二人もまた最後には再生してゆきます。それは罪が消えるわけではなく、忘れようとして忘れられず、もがいて来たものを、あるがままに受け入れると言う気持ちになったことによってでした。

       

      原田マハの作品は、美術を題材にした斬新な作品群によって、注目を浴びてきましたが、それ以外にも多彩なカテゴリーの作品を描いています。

      このまぐだら屋のマリアは、たとえば、

      本日はお日柄もよく”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=1940)や、

      旅屋おかえり”(http://kitamahokif.jugem.jp/?eid=2615

      のような、美術にテーマを置いていない一連の作品群に分類されるかと思います。

       

      いずれにしても、原田マハの多彩な作風に魅了されますね。

       

       

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      #原田マハ #まぐだら屋のマリア #尽き果て #食堂 #聖書 #贖罪 #赦し

       

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      | 弘前りんご | 文学 | 23:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
      この小説の主人公は一体誰なんだ。あっ、そうか...._ 異邦人(いりびと)原田マハ 著
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        常盤貴子が、京都老舗の和菓子屋の若主人を演じ、京都人から見た(内側から見た)京都の日常が描かれたドラマ ”京都人の密かな愉しみ” 好きな番組でした。

         

        一方、原田マハ ”異邦人(いりびと)” は、外側から見た京都なのかも。

         

         

        幾重にも折り重ねられたトラップ。絡み合う人間関係。

        美術を巡る小説でありながら、二転三転して幾度も読むものに息を飲ませ、最後にもつれた糸が一気に解けるサスペンスのようでもあります。

        楽園のキャンバス”を読んだ時の興奮が蘇りました。

         

        しかし、今回の舞台は京都。

        タイトルのカッコ内の”いりびと”とは、京都に暮らす人であっても、京都生まれの京都育ちではない人をそう呼ぶそうです。今の時代、誰でも京都に行くこと(観光)は出来て、そこで暮らし始めた人(いりびと)も、それなりに楽しめる街ではあります。

        しかし、そのうち越えられない見えないバリアがあることに気づきます。

        その中に入るには、中から招いて貰う必要があります。もちろん招かれる資格があればですが。

         

        このタイトルはそれ以上の意味が込められているようです。

         

        この小説における中の人とは、なにを置いても美に仕える人でしょう。

        そして異邦人(いりびと)の中から、選ばれ招かれる資格のある人とは....

         

        日々のしがらみの中で、ルールや規範を第一に生きている身からすれば、菜穂の生き方はなんとも羨ましい、いや、妬ましい気持ちにもなります。

        主人公は若い女性二人。一人はもって生まれた審美眼で、新たな才能を見出す才に恵まれた私設美術館の学芸員で副館長。そしてもう一人はまだ無名だけれど、天分をきらめかせる画家。その二人の運命的な出会いから、二人を取り巻く人々の人生がきしみ、崩れてゆきます。

         

        しかし、この小説の本当の主人公は....

        それは各自読み取るべきことでしょう。

         

        *本作品は、2018年 第六回 京都本大賞に選ばれました。

         

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        #原田マハ #異邦人 #いりびと #美に仕える #市井の人々 #京都 #学芸員 #画家 #運命的出会い

         

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        | 弘前りんご | 文学 | 23:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
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