弘前りんごの北のまほろば

司馬遼太郎の”街道をゆく”のタイトル”北のまほろば”に魅せられて、本州最北端の県にやってきました。日々見聞きしたこと、感じたこと、考えたことなどをつれづれなるままに綴ります。
最初から画家だった者は、一人も居なかった _ 琳派の系譜に見る歴史の妙
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    琳派の系譜を調べているとき、まさに歴史の妙というものを実感しました。

     

    日本画のルーツは、例えば源氏物語の絵巻に現れる物語絵が一つですが、それらを描いたのは名も無き絵師たち。いわば職人の絵。そしてそれは流派、絵師集団を形成してゆきます。
    従って絵を描くにはその流派に入門して、高度な技術を習得する修行を積んで、初めて一人前の絵師となるのが一般的な道でした。
    例えば、狩野派土佐派四条円山派と言った具合に。

    しかし、琳派と呼ばれる日本画の系譜を構成する代表的な画家、俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一

    そのいずれもが、その道を辿っていないのは非常に興味深いことです。なにせ、お互いに会ったことはなかったのですから。というより、会うことは不可能だったのです。


    風神雷神図屏風(俵屋宗達)

    俵屋宗達は、もともと京の扇屋を営んていた人。生没年さえ不明の謎の存在で、誰かについて絵を習ったという情報はありません。



    本阿弥光悦(1558年 - 1637年2月27日 wikipedia)

    当時の一大芸術プロデューサー的存在だった本阿弥光悦に見出され、本格的に画家の道を進むことになります。

     


    鶴下絵和歌巻(部分)(下絵・宗達、書・本阿弥光悦)京都国立博物館(wikipedia)

     

    この作品では、ほぼ同じ鶴の絵が、繰り返し描かれていますが、その配置が絶妙です。

    風景画というより、商業デザインのような趣です。この特徴は、次に登場する尾形光琳の、例えば、燕子花図屏風にも言えます。

     

    尾形光琳:燕子花図屏風 (wikipedia)

    カキツバタの集まりが繰り返し、パターンとして描かれています。



    紅白梅図(wikipedia)

    さて、宗達の百年後に登場する尾形光琳(1658年  - 1716年7月20日)は、京の有名呉服屋の若旦那。30過ぎまで家の商売に手を付けず、放蕩の限りを尽くしていました。しかし父親が死んで商売も傾き、生活の糧を得無くてはならなくなり、見よう見まね(独学)で絵師になったという経歴。そんな彼が本気で絵師の道に進むきっかけとなったのが、俵屋宗達の風神雷神図屏風との出会い。それをコピーし、更にそこに彼独自の画風を加えて、彼の風神雷神図屏風を残します。オマージュ作品の優れた典型例かと。


    「風雨草花図」(通称:「夏秋草図屏風」)wikipedia

    更にその100年後に登場する酒井抱一(1761年8月1日 - 1829年1月4日)は、武士の生まれ。それも名門酒井雅楽頭家の次男に生まれました。相続のいざこざで武士に嫌気を差したのか、風雅の道に進むことになります。そして彼も、尾形光琳の作品との出会いから、本格的に画家の道を邁進します。


    彼もまた、会ったことのない先達尾形光琳へのオマージュとして、風神雷神図屏風を残します。しかもその屏風の裏側にこの絵(風雨草花図)を、表の光琳の絵と状況をリンクさせて描いています。
    風神の裏には風になびく草花、雷神の裏には雨に打たれる草花というように。

    作品のみを通しての出会いが、琳派という偉大な日本画の系譜を形成したということになり、正に歴史の妙としか思えません。

     

     

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    #琳派 #系譜 #俵屋宗達 #本阿弥光悦 #尾形光琳 #酒井抱一 #風神雷神図屏風 

     

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    | 弘前りんご | 美術 | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
    合い通じるものがあるんでしょうね、きっと。フィリップス・コレクション展(東京三菱一号館美術館にて)
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      名建築家ジョサイア・コンドルが設計した三菱一号館を復元した赤レンガの瀟洒な建物に美術館、三菱一号館美術館

      今は改修中で閉館中のブリジストン美術館と並んで、東京での私のお気に入りの美術館の一つです。

      どちらも、私立でしっかりと所蔵品を持つ美術館です。

       

      三菱一号館美術館

       

      貸家型の美術館ではなく、所蔵美術品をしっかりとコレクションし、それをベースに様々な切り口で展示をするという、高橋明也館長の理念の下、これまでの10年に実にユニークな美術展を展開してきたこの美術館。ヴァロットンという不思議な味わいのある画家を知ったのもここです。

       

      今回は、ワシントンDCにある、私立の個人の美術館として、あのMOMA(ニューヨーク近代美術館)よりもはやく、収集した近現代の美術品の展示を始めた、フィリップス・コレクションの所蔵作品を紹介する、フィリップス・コレクション展

       

      フィリップス・コレクション(wikipedia、By 英語版ウィキペディアのAgnosticPreachersKidさん, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15736057

       

      今回の展覧会の展示の仕方もユニークで、通常の作者別とか、年代別ではなく、創設者ダンカン・フィリップスが入手した年で、時系列的に並べられています。そうすることに依って、この類まれなる審美眼を持つフィリップスの、作品に対する強い思いが見えてくるということなのでしょう。そしてその作者、作品に対するフィリップスの言葉が、いたるところに掲示されていました。高橋館長のダンカンフィリップスへの強いシンパシーを感じます。

       

      コレクションは、モネヴェトゥイユへの道から始まりました。

       

       

      ただ買い集めるだけではなく、研究し、論文を発表し、また作者と交流し、支援するという、あらゆる形で芸術にコミットしていったようです。

       

       

      中でもナビ派のピエール・ボナールを高く評価し、彼とは個人的にも親しい交流があり、それによってボナールは次々と作品を発表したとのことです。

       

      今回も、とてもユニークで興味深い展覧会でした。

       

       

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      #三菱一号館美術館 #ジョサイアコンドル #フィリップスコレクション #ワシントンDC #モネ #ボナール

       

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      | 弘前りんご | 美術 | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
      フェルメール展の目玉はもちろんフェルメールの9点ですが、他にも興味深いものが (*^^*)
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        フェルメールは、現存が確認されている作品数が35点と、極めて少なく、それらが世界中に点在するため、一堂に会してみる事は叶わぬことでした。

        しかし、今回日本にそのうちの10点(初来日が3点:ワイングラス、赤い帽子の娘、鳥もち女)がやってくることに。

        因みに、フェルメールは通称で、本名はヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト (Jan van der Meer van Delft)。
        デルフト(彼が居た街)のヤンさん?

         

        DSC_0671.JPG

         

        ただし、細かいことを言えば、東京上野の森美術館での展示では9点で、そのうち、”赤い帽子の娘”は会期の途中(12月20日)までの展示。”取り持ち女”は、1月9日から会期終了までとなっています。

        また、”恋文”は東京展での展示はなく、大阪市立美術館でのみ展示されることになっています。ちなみに大阪店での展示作品数は6点です。(https://www.vermeer.jp/

        従って、今回来る全作品を見るには、残念ながら都合3回は出かけないといけないのです。しかも東京と大阪に (^_^;)

         

        DSC_0682.JPG

        右上、なぜ9月35日? と一瞬思いましたが、全35作品中、9作品が来ていることを表しているんでした (^_^;)

         

        また日時指定入場制で、チケット購入時に、何日の何時から入場するかを指定してチケット購入する必要がありました。

        私は、この日の夕方5時からの入場チケットを購入していたのですが、4時30分に着いた時点で、すでにその時間に入場予定の人の長蛇の列が (^_^;)

         

        DSC_0675.JPG

        写っているのが、これで全体の三分の二くらいです (^_^;)

         

        しかも入れ替え制ではないので、前の時間の入場者がどれだけ残っているか?

        これで果たして5時になったらこの人達が全員入れるのかが危惧されました。列の整理をしている人に聞くと、20−30分くらいだろうとのこと。ため息が出ました、なんのための時間指定なんだと。

         

        DSC_0677.JPG

         

        しかし、入場が5分ほど前から始まり、結局5時15分頃には入るには入れました。

         

        でも、中は激混み (^_^;) 最後のフェルメールの作品が一同に介するフェルメールルームでは、各絵の前に陣取って全く動かいない人の群れが出来ていて、全部を間近に見るのは困難を極めました。

         

        そのせいでというか、そのおかげというべきか、フェルメール以外の、その前後の時代のオランダ絵画の方は、比較的空いていて、じっくりと見ることが出来ました。特にピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーンなど。
        また、ヘラウド・ダウの本を読む老女など、リアリズム絵画を彷彿とさせる、実に興味深い作品でした。

         

        フェルメールの絵のイメージから、当時のオランダ絵画は風俗画(庶民の日常を描いた作品)と思いがちですが、歴史画、静物画、風景画、肖像画などにも優れた作品が存在しました。また他のジャンルに比べて、静物画はヨーロッパでは一段低く見られがちでしたが、少なくともオランダでは事情が異なり、市民に好まれて居たのが分かります。

         

        マルタとマリアの家のキリスト(wikipedia)

         

        フェルメールも歴史画からスタートし、今回も”マルタとマリアの家のキリスト”という、風俗画に転向する前の歴史画が来ています。室内の人物を、光を効果的に当てて、浮き上がらせる手法はこの頃からすでに。

         

        ワイングラス(wikipedia)

         

        今回の作品の中では、”牛乳を注ぐ女”などの代表作も入っていますが(随分前に来日した時、見ました)、私が一番気に入ったのは、日本初公開の一つ ”ワイングラス”。男女二人の心のうちの声が聞こえてきそうな作品です。

         

        フェルメールの風俗画の絵の構成は共通していています。
        室内で、外光の入る窓が左側にあり、人物と室内の重要なアイテムを照らし出して、静謐でありながら、劇的な情景を浮かび上がらせています。もちろんこの絵もそうです。

         

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        #フェルメール #上野の森美術館 #風俗画 #歴史画 #肖像画 #風景画 #ピーテル・デ・ホーホ #ヤン・ステーン #ヘラルド・ダウ

         

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        | 弘前りんご | 美術 | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
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        (弘前りんご)
        原田マハの短編小説集”モダン”は、MOMA(ニューヨーク近代美術館)を舞台にした作品集です。
        私にとって、おそらく日本人にとっても、印象深いのは、第一章”クリスティーナの世界”ではないでしょうか。
        タイトルは、同名のあのアンドリュー・ワイエスの名作から取ったもの。
        下半身麻痺の女性が、草原を這って、我が家に向かって進もうとしている光景を描いたもの。
        小説では、2011年3月11日の東日本大震災のときに、福島県立美術館にこの作品が、アンドリュー・ワイエス展のために貸し出されていて、MOMAの委員会が、作品を守るために即回収を決め、MOMAのコーディネーターの職にあった日系女性職員杏子を派遣するというストーリー。
        この作品を日本に誘致するために多大な努力を払った現地学芸員伸子と、本意は回収するには及ばないと思っても、上からの命によって福島に向かわざるを得ない杏子の心の交流を描いています。
        救いは、杏子が福島のためにワイエスの作品を近い将来、再び貸し出せるようにすると決意するところです。
        そしてそれはこの絵の、絶望的な状況にあっても、希望を捨てず前に進もうとする女性の強い意志の力に合い通じるものがあるのではないでしょうか。
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        旅屋おかえり [ 原田マハ ]
        旅屋おかえり [ 原田マハ ] (JUGEMレビュー »)
        ”旅屋おかえり”は、旅そのものが目的であり、生きがいの、そしてそれを仕事にしてしまった一人の女性の夢、挫折そして再生の物語です。

        旅屋とは、故あって自分は旅に出ることが叶わない依頼人に代わって旅をして、本人の代わりに希望の体験や目的を果たして、その旅の記録を依頼者に成果として届けるというもの。それを思い立ったのは偶然の出会いから。

        またタイトルのおかえりは、家に、故郷に戻ったときに掛けられる言葉、”おかえり” と、丘えりこの愛称、おかえりをもじったものです。そしてその言葉を聞きたくて旅に出るのです。

        旅屋の仕事としての旅によって、契約内容を遥かに超える成果(人間関係のもつれを解き、凍てつきを融かす)がもたらされるだけでなく、主人公、そしてそれを取り巻く人々の心までも癒やしてゆきます。

        そして成功するまでは故郷には帰れないと覚悟している主人公が、故郷で待つ母のおかえりという言葉を聞ける日も間もないというところで、小説は幕を閉じます。

        まさにハートウォーミングな小説。読後にじんわりと心があたたまる作品でした。
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